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第35話 『銀色』の正体
俺とニナの部屋で、いつもの4人で朝食を摂る。
そそくさと早めに食事を終えて、俺は立ち上がった。
「む、どこか行くのか?」
ニナがそれを見咎めて、訊ねてくる。
「ああ、ちょっとね」
「……言葉を濁すではないか。どこへ行くんじゃ」
ニナはジト目で問い詰めてきた。
くっ。なんて鋭いヤツだ。
「別に、ちょっと村を見て来ようと思っただけだって」
「なら、わらわも行く」
「いやいや! ほら、ニナはまだ食事も残ってるし。たまには別行動してみるのもいいんじゃないか?」
「……怪しいのじゃ」
「怪しいですね」
「あらかさまに怪しいな」
何ぃ!? ラティとナツメまで!?
俺の完璧な演技を見破るとは……。
「この村の生活に興味があるだけだ。ニナはそういうの、興味ないだろ?」
「竜輔殿、お主、嘘をつくとき、眉が動く癖があるのを知っていたか?」
おいおい。甘く見るなよ。
「馬鹿め、そんな手に引っ掛かるか」
「いえ、その反応は引っ掛かっているも同然ですが……」
「……しまったぁぁぁ!」
「リュースケ! わらわを騙してまでどこに行く気じゃ!」
「い、いや、しまってない! しまってないぞ。全然嘘なんかついてない」
チャキ。
喉元に刃物の気配。
エレメンツィア……いつ出てきた?
「主の質問に正直に答えてください」
「……ええ、ええ。嘘ですとも。キツネミミの美少女をナンパしに行こうとしていましたが、それが何か?」
「開き直りましたね……」
「リュースケ……そなたという奴は……」
「……男らしいのかそうでないのか、よくわからんな」
結局、村は4人で見物することになりました……。
見物といっても、それ程広い村でもないし、見どころもこれといってなさそうだ。
キノコの家はすごいと思うが、さすがにそれだけじゃな……。
「む!」
そんな中、とある光景を見たナツメが瞳を光らせた。
擬音語をつけるなら「キュピーン!」という感じに。
『ハッ!』
バキッ!
『あでっ』
『まだまだ、槍に振り回されているぞ』
『いてて。はい。すいません』
オグロスさんが、数人のルナール族の青年に、槍の指導をしていた。
「……強い」
ナツメは好戦的な笑みを浮かべて、そちらに歩み寄ろうとする。
あー。スイッチ入っちゃったよ。
「悪い癖が出たのう」
「ですね……」
やれやれだな。
「はーい。ストップ。ダメダメ。決闘禁止」
俺はナツメの肩を掴んで引き留めた。
「むっ。何故だ、竜輔殿」
「不機嫌そうな顔しても駄目。『銀色』がいつ来るかわかんねぇんだから、怪我とかしたらまずいだろうが。お前が怪我したら、誰が『銀色』と戦うんだよ」
「まるで自分は戦わないような口ぶりですね」
「基本やる気ないからのう」
煩いぞ。そこの2人。
「その時は、竜輔殿が戦えばいいだろう?」
「……」
「いや、そんな嫌そうな顔をせんでも……」
「だってめん――。言いだしっぺはナツメなんだから、お前が戦うのは当然だろう」
「正論だが、素直に頷けないのは何故だろうか……」
とにかくナツメを説き伏せて、決闘はやめさせる。
「んじゃ次は村の反対側にでも――」
『よろしくお願いします!』
オグロスさんの槍術教室の方から聞こえてきた声に、俺は高速で振り向いた。
なかなか可愛らしい、同年代のキツネっ娘が、槍を構えているのが見えた。
「やっぱり俺も、槍を教わりに」
がががしっ。
両肩をナツメとラティに、腰をニナに掴まれた。
「万一に備えて、竜輔殿も怪我は避けたほうがいいな」
「そうですね。リュースケさんが言った事ですしね」
「リュースケ。村の反対側が見たいのじゃ」
ズルズル。
「いや、ちょ、待っ、アッー!」
3人に引きずられ、俺はその場を後にさせられた。
やはり大した広さはなく、昼前にはだいたい村全体をまわり終えてしまう。
所々にある破壊の爪後と、怯える人々が痛々しかった。
「やはり、放ってはおけんな」
「はい。私も今度こそ、お役に立ってみせます!」
ナツメ、ラティの熱血組は、ますます気合いが入ったようだ。
俺はそれより、破壊された家の状態に気になるところがあった。
しゃがみ込んで、キノコの破片を検分する。
「これは……」
非常に鋭利な切り口で切断されている部分もあれば。
原型を止めないほど粉々にされたと思しき部分もある。
一体どういう存在なんだ?
「どうした? リュースケ」
「ああ、この破片――」
キャーー!
聞こえた悲鳴に、4人がすぐさま走り出す。
美少女の悲鳴だったら、もっと全速力なんだけど……。
現場で尻餅をついていたのは、案の定、おばちゃんでした。
「どうされました!」
「あ、あ。『銀色』、が……」
ナツメの問いに、おばちゃんが途切れとぎれに答える。
「落ちついてください。『銀色』はどちらへ?」
「あっちに……る、ルナ様が追って……!」
ダッ!
おばちゃんが指した方向へ、俺は全力で駆けだした。
後方から他の3人も追ってきているのが分かったが、待たずに先行する。
視界の隅に崩れた家を確認しながら、焦りを押し殺してひた走った。
……見えた!
「やめろー! 何すんだよ! 何で家壊すんだよ! やめてくれよ!」
ルナが果敢にも、銀色のソレを槍で突く。
ガッガッ!
重い金属音がするだけで、ビクともしていない。
ドォン!
ソレが何かすると、またひとつキノコの家が崩れた。
「あっ!」
ルナが声を上げる。
遠目に、ルナール族の戦士たちも向かってきているのが見えるが、とても間に合わない。
「っおおおおお!!」
ダンッ! ガシッ。
「っ!?」
ガラガラガラ!
間一髪。
崩れたキノコがルナを押し潰す寸前、彼女を抱えて離脱することに成功した。
「ヒュー! あっぶねえなぁおい」
ルナが、俺の腕の中で目を白黒させている。
が、すぐに我を取り戻し、バタバタと暴れる。
「は、放せよっ!」
「はいはい」
放してやると、ルナは瓦礫を睨みつける。
そこには『銀色』が埋もれているはずだ。
「……死んだかな?」
「あー。だといいんだけどな」
正直、ルナを助けるのに必死で、『銀色』の事はよく見ていなかった。
「竜輔殿!」
「リュースケさん!」
「リュースケ!」
「リュースケ殿! ルナ!」
続々と、他の面子が到着した。
「親父!」
ルナはオグロスさんの元に走り寄った。
オグロスさんはルナを抱き止める。
「よかった……! まったく、無茶をするな! 馬鹿娘!」
「……ごめん」
感動のシーン。
だが、喜んでいる暇はない。
――ガラ。
瓦礫の山が、独りでに崩れる。
内部から持ち上げるかのように。
「何っ!?」
ナツメがコテツを抜き、構える。
俺はニナを背後に庇う。
「エレメンツィア、いざとなれば、ニナは頼むぞ」
返答はないが、聞こえていると信じる。
ガラガラ。
瓦礫が崩れ、『銀色』が姿を現す。
『ピー。ガー。テステスマイクのテスト中。明日は全国的に晴れ時々曇り。ところによって隕石の半分は優しさで出来ています。ただし、裸足で歩くには距離がありすぎるでしょう』
…………。
「……何を言って……いやそれよりも、あれは一体……?」
ナツメが混乱した様子で呟く。
尤も混乱具合では、この場で俺に優るヤツはいないだろう。
「リュースケ。あやつは何を言っておるんじゃ?」
ニナの質問に答える余裕はなかった。
いや、仮に余裕があっても答えられんけど。
「た、確かに金属ですね……。でも、あれは……人?」
人じゃないな。うん。あれは人じゃない。
というか。
「ロボじゃねぇかっ!!」
ビクッ!
俺の突然の大声に、周囲の人は身体を震わせた。
「び、びっくりするだろ! 大声だすなよ!」
ルナに怒られる。
「大声も出すわっ! 何でロボが!」
「ろぼ? なんじゃそれは? あやつの名前か? リュースケの知り合いか?」
「いや。知り合い以前に人じゃないし、アレ」
金属フレーム剥き出しで、塗装も何もされていない、無骨な人型ロボット。
腕にはドリルとかブレードとかのギミックが装着されており、ウィンウィンと駆動音を鳴らして振り回す。
危険視すべきは左手に見えるガトリングな銃口。
破壊された家に弾痕はなかったので、弾は切れていると思いたい。
「……前の世界で、アレに似たものを見たことがある」
俺の発言に、ニナが目を見開く。
「何!? ではあれは異世界の!?」
「いや、そうとも言い切れない、というか、違うと思う」
何しろ、あれほど精巧かつ強靭な人型ロボットなど、ロボット大国日本でも構想……いや、空想の段階に過ぎなかった。
なにゆえこのようなロボが、しかも明らかにバグった状態で暴れまわっているのかなど、俺にもまったくわからない。
わからないが……。
「ナツメ。金属は斬れるか?」
「……素材や厚さにもよるが……。アレは少々、難しいだろう」
ナツメは口調に、多少の悔しさを滲ませた。
「ラティ、ちょっと、射ってみろ」
「ええ!? 何でです!?」
「いいから」
「うう……わかりましたよ……。前にも似たようなことが……」
ラティは弓に矢をつがえる。
ボーっと突っ立っているロボに、ラティの矢が襲いかかった。
ヒュン! ゴッ!
そしてあっさり弾かれる。
「うわーん! やっぱり駄目でした!」
「落ち着け。無理なのはわかってたから」
「それはそれで嫌です!」
音からして、やはり相当硬い、そして重い金属だ。
タングステン、か?
……まあ素材が何かはどうでもいい。
問題は、あれを止める手段がわからないということだ。
ロボが、ゆっくりとラティの方へ振り向いた。
経年劣化か、薄汚れた銀の顔の口のあたりの穴から、くぐもったような声を発する。
『敵対種族許すまじ。新型ヒューマノイドは二酸化炭素排出量ゼロでとってもクリーン。命令受信失敗。ルーチンに従って殲滅を開始します。ただし、裸足で歩くには距離がありすぎるでしょう』
「お前は裸足で歩くことに何のこだわりがあるんだっ!」
とかつっこんでいる場合じゃない。
何だよ何だよ、攻撃しても反撃はないんじゃなかったのかよ!
ジャキン。
ロボが左手をラティに向ける。
「え? え?」
ラティは何が何だかわからずに、おろおろしている。
「ぐっ! やっべ!」
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