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(06/03)
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ネット小説とか書いてます。竜†婿は「小説家になろう」でも公開中です。
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第4話 竜に婿入り


「リュースケは、ミッドガルドではないところから来たのか!?」
 
 ニナは瞳をキラキラと輝かせて、好奇心に満ちた視線を送って来る。
 
「うん、まあ……」
 
 来たというか、来させられたというか。
 
「なんか、召喚された?」
 
「あ、それわらわがやった」
 
「お前の仕業か! 帰り方は!?」
 
「知らぬ」
 
「おい! ……まあいいか」
 
 向こうより、こっちの方が面白そうだし。
 生徒会に誘ってくれた会長には申し訳ないけれど。
 思いのほか、チョイ役だったな、あの人は。
 
 ニナの話によると。
 
 この世界の名前は「ミッドガルド」。
 人、獣人、竜人、魔人。
 大きく分けてこの4種族がそれぞれの国を持つ。
 そしてここは竜人の国で、国全体をさして「竜の都ドラッケンレイ」と言うらしい。
 この世界には魔法とかもあるようだ。
 ニナは使えないらしいが。
 
「魔法は、人か魔人しか使えんのじゃ」
 
「ふーん」
 
 ん? 待てよ。その言い方だとまるで……。
 
「ニナは、人じゃないのか?」
 
「見ればわかるであろう。わらわは白竜人じゃ」
 
 いや、わからんし。
 マジかよ。人じゃないのか……。
 
「そういや、名前に『ドラッケンレイ』って入ってるよな」
 
「うむ。王族は皆、名前の最後にそれが入る」
 
「つまり、ニナは王族?」
 
「白竜王の第3王女じゃ」
 
 本物のお姫様だったか。
 まあ異世界召喚モノでは定番だけどな。
 
「竜人とやらだから、こんなに強かったわけだ……」
 
「む? リュースケはやはり、竜人ではないのか?」
 
「ああ。俺は人だ」
 
 多分。
 
「人でありながらその強さ! さすが、我が魂の伴侶!」
 
 嬉しそうだな。
 
「てか、その魂の伴侶ってどういう意味があるんだ」
 
 俺の厄介事センサーが激しく反応しているぞ。
 
「魂の伴侶になるという事は、人で言えば結婚するようなものかのう。竜人でも、それとは別に結婚はあるが」
 
「ふーんそうか。結婚か……。って待てい!」
 
 何でそんなことになってんだよ!
 
「なんじゃ。わらわが相手では……不服か?」
 
 うっ。
 強がっているようで、その実不安そうな瞳で上目遣い。
 反則だろ……。
 っていかーん! 流されるな俺!
 
「不服とかじゃなくてだな。こういうのは、順序とかね? あるだろ?」
 
 結局弱気な台詞だな俺。
 好みのタイプには弱かったりする。
 
「そなたの言う事もわかる。じゃが、わらわには時間がなかったのじゃ」
 
「というと?」
 
「実は、このままでは近いうちに、わらわは政略結婚させられるのじゃ」
 
「ふむ」
 
「相手は黒竜王の第2王子、ゲオルグ・フォン・シュヴァルツ・ドラッケンレイ。女癖が悪いことで有名な男じゃ。わらわは別に、女癖程度でどうこう言うほど狭量ではないが、なんかあやつは生理的に受け付けぬのじゃ!」
 
 本気で嫌そうにしているニナ。
 黒竜王の第2王子、か。
 
「俺ならいいのか?」
 
「うむ。リュースケなら強いし、顔も悪くない。何より、わらわの名前を1度で覚えたからな!」
 
 名前って、そんな事でか。
 
「でもなあ。黒竜王って、ドラッケンレイで白竜王と並んで1番偉いんだろ? その息子の婚約者を奪ったとなれば……」
 
 あれ?
 やばくね?
 俺、殺されるんじゃね?
 
「心配はいらぬ!」
 
「何を根拠に!」
 
「竜人のしきたりでな。婚約者を奪うときは、決闘で勝てばよい」
 
 何ですと?
 
「それだと、力の強い奴がめちゃくちゃ有利じゃね?」
 
「まあそうじゃが、当然、意中の相手が自分を好いておらぬのなら、決闘で勝っても無理矢理自分の婚約者にはできぬ」
 
「へぇー。でもな」
 
 仕組みは理解したが、言いたいことがある。
 
「何で俺がわざわざそんなことせにゃならんのだ!」
 
「そこを何とか! 頼む!」
 
「頼まれたからってホイホイ結婚する奴がいるか! それも命の危険があるのに!」
 
「わ、わらわと結婚すれば、一生楽して暮らせるぞ? それなりの権力を得るし、金も女もある程度は望みのままじゃ。まあ、女に関しては、わらわを1番に愛してもらわねば嫌じゃが……側室くらいは、王族なら普通におるしな」
 
 なん……だと……。
 俺の心に、波紋が拡がる。
 側室OK?
 
「白竜城の後継ぎには兄上がおるから、政務で忙しいということもない」
 
 な、なんて魅力的な……!
 
「い、いや、そんな即物的な理由で……」
 
「そうか……ダメか……。そうじゃよな。いくら条件がよくても、わらわの事が気に入らなければ、結婚など……。わかった、魂の伴侶を、辞め……」
 
 がし!
 
「まあ、待て」
 
 俺はニナの肩に手を置いて、早まった行動をやめさせる。
 
「確かに、金や女や、自堕落な生活に惹かれて結婚するなんてもっての他だ。だが俺は異世界からこちらに来たばかりで、他に知り合いもいない。それに困っている女を放っておくのは主義に反する(嘘だけど)。お前は俺の好みのタイプだし、お前の『強さ』に惹かれてもいる」
 
「……つまり?」
 
「結婚しよう!」
 
 俺はキラーンと歯を光らせて、親指をビシっと立てた。
 
 ニナは跳びはねて喜んで、俺に抱きついてきた。
 ふ。これで、人生勝ち組だ。
 
 ……死ななければ。
 

 
「わらわの魂の伴侶になったことは、内緒にしておくのじゃ」
 
「何でだ?」
 
 地下室からの長い階段を、俺の首にぶら下がるニナを運びながら登る。
 
「魂の伴侶になると、女から男に、力の一部が譲渡される。つまり、男は強くなるのじゃ」
 
「なるほど、つまり」
 
「決闘の前に魂の伴侶となることが禁止されておるわけではないが、バレれば卑怯者の誹りは免れん」
 
 ふむ。
 
「そんな反則みたいなこと……」
 
「……ダメか?」
 
「いや。大好き」
 
 俺はニナと、ニヤリと笑みを交わした。
 
「ところで、そのゲオルグとか言うヤツは強いのか?」
 
「強い。基本的に、黒竜人は白竜人より戦闘能力に秀でておるからの。わらわは白竜人の中ではかなり強いほうじゃが、黒竜人に混じれば中の下といったところじゃ」
 
「んでゲオルグは?」
 
「上の下くらいかの」
 
 マジか。そりゃやばいな。
 
「大丈夫じゃ! リュースケならきっと勝てる!」
 
 そんな純真無垢に信頼の眼差しを向けられても……。
 まあ、魂の伴侶になって強化されたらしいし、何とかなるかな。
 というか何とかしないと、俺のウハウハハーレム計画が――。
 
「む」
 
 ニナが一瞬、不機嫌そうな顔をする。
 
「何か、不埒なことを考えておらんかったか?」
 
「全然?」
 
 ポーカーフェイスで答えてみせる。
 魂の伴侶だからか? 邪な考えが伝わってしまうようだな……。
 
「よし。行くか」
 
「うむ!」
 
 何だかんだ言っても俺は、ニナより強いという黒竜人のゲオルグと戦うことを、楽しみにしている。
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