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(06/03)
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ネット小説とか書いてます。竜†婿は「小説家になろう」でも公開中です。
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第5話 挑むは黒竜の王子


 白竜城の謁見の間は、騒然としていた。
 まあ、当然っちゃ当然だが。
 
「異界からの客人。そなたがニナを賭けて、ゲオルグと決闘すると申すのか?」
 
 ニナの親父、白竜王バルトロメウス・フォン・ヴァイス・ドラッケンレイは、俺の予想とは大分違っていた。
 髭もじゃの、いかにも王様! って感じの人を想像していたんだが。
実際には、背中まで伸びるニナと同じ白金の髪、すらっとした長身、そして涼やかな美貌。下手したら、女と間違えそうだ。
それにしても、せいぜい20歳くらいにしか見えんぞ。
 
 王様の問いに、俺は答える。
 
「ああ」
 
 ざわざわ!
 
 あ、つい敬語を忘れていた。
 なんと不敬な! とか大臣っぽい人々が騒いでいる。
 横の方に立っている、ゲオルグと思われる肌の浅黒いイケメンは、顔をしかめてこちらを睨んでいた。
 
 王様はそんな彼らを、手を掲げて制す。
 
「そなたは、黒竜人か? それとも白竜人か?」
 
 ニナにも似たようなことを聞かれた。
 どうやら、俺の見た目は、そのどちらの特徴も合わせ持っているらしい。
 
「いや、人だ」
 
 ――なんだと! 馬鹿な! 死ぬ気か!
 
 外野うるせぇ。
 バルトロメウス王は外野と違い、あくまで優しく諭すよう言う。
 俺この人嫌いじゃないなあ。
 
「人の身では、竜人には勝てまいぞ? 命を粗末にするものではない」
 
「その心配は無用じゃ!」
 
 俺の隣で静かにしていたニナが、突然声を張り上げる。
 
「リュースケはわらわに勝つほどの実力を持っておる。人だと思って甘く見ると、痛い目を見るのはゲオルグのほうぞ」
 
 ざわ!
 
 あ、コラ。余計なこと言うなよ。
 油断させときゃ楽に勝てたかもしれないのに。
 いや、そんな「どうじゃ、言ってやったぞ!」みたいな顔でこっち見られても。
 
 周りはそれを聞いて、ますます喧騒が増している。
 
 ――まさか、あの姫様を……。人の身でありながら……。化物か……。
 
 言われてる、言われてる。
 大臣共は気味悪がっているようだが、なんか兵士たちは俺に尊敬の眼差しを向けていた。
 ……苦労してるんだろうな。
 
「う、む。にわかには信じがたい話であるが……」
 
 王様は迷っているようだ。
 
「いいではありませんか」
 
 王様の隣に座っていた、王妃様が言った。
 王妃の名前は、エルザ・フォン・ヴァイス・ドラッケンレイ。
 ニナにそっくりだが、背は160センチくらいはある。
 長い髪は頭の上で何回か折りたたみ、髪留めで留めていた。
 というか、この国の大人はどうなってんだ。
 全員若すぎる。この人も20歳くらいにしか見えない。
 竜人の特性、なんだろうな。
 
「しきたりに従うなら、決闘を許可することに何ら問題はありません。ニナが良いと言っているのですから。人が挑んではならない、などという決まりもありませんしね」
 
 話がわかるな、王妃様。美人だし。巨乳だし。
 ニナがこっちを睨んでいる。ホント鋭いなあ……。
 
「しかしエルザ……」
 
 王様はなおも渋る。
 まあそりゃあなあ。
黒竜人との関係改善が目的の婚約に、まったく関係ない人間が割り込んできちゃあ、困るだろうよ。
 だが俺の明るく楽しい未来のために、頷いてもらうしかない。
 
「わかりました。お受けしましょう」
 
 これまで黙っていたゲオルグが、とうとう声を上げる。
 
「ここまで言われて引き下がっては、黒竜第2王子の名が廃るというもの」
 
「む、しかし、ゲオルグ殿下」
 
 王様が喰い下がる。
 
「ご心配なく。勝っても負けても、国際問題にするつもりはありません。まあ、人が僕に勝てるとは、到底思えませんが」
 
 フン、と鼻を鳴らして、こちらを見下すように見てくる。
 あー。確かにこいつウザいわ。
 小物っぽいけど。
 
「よろしい。では決闘場へ移りましょう」
 
「あの、エルザ? 王様は余なんだけど」
 
 仕切り始める王妃に、王様が困ったように言う。
 
「見学も許可します。証人として必要ですからね」
 
 王妃は王様を無視した。
 王様はがっくりと肩を落としている。
 王妃つえー! 王様よえー!
 

 
外から控えのスペースに流れ込む空気は、やや冷たい。
ドラッケンレイはかなり北に位置する国らしいからな。
日射しは、まだ明るい。明らかに昼間だ。
俺がこっちに飛ばされたとき、向こうでは夕方だったんだけど。
時差とかあるのかな。
 
 場所は移って決闘場。
 まさしく決闘場、コロシアムだな。
 円形の広場と、周りには観客席。
 観客席は超満員。
 さすがに、第3王女の婚約者決定戦ともなれば、注目されるようだ。
 
「さて、行きますかね」
 
「頼んだぞ、リュースケ!」
 
 ニナに頷いて、控えのスペースから中央へ進む。
 正面の控えスペースから、ゲオルグも出てきた。
 動きづらそうな、気障気障しい王子っぽい服のままだ。舐めとんのか。
 あ、俺も学ランのままだけどね?
 
「降参するか、気を失うか、死んだら負けとします。竜化はしてもいいですが、ブレスは禁止です」
 
 ゲオルグと向き合うと、審判をする精悍な顔つきの白竜人が、ルールを説明してくれた。
 
 あ、やっぱ死ぬ事あるんだ……。
 てか竜化って何? ブレス?
 
「心得た」
 
「あー……わかった……」
 
 しぶしぶ了解すると、後方でニナが「気合いを入れろー!」とか叫んだ。
 
「ゲオルグ・フォン・シュヴァルツ・ドラッケンレイだ」
 
「リュウスケ・ホウリュウイン」
 
 名乗られたので、名乗り返す。
 
「生きて帰れると、思うなよ」
 
 なんか滅茶苦茶怒気を込めて睨んでくる。
 すげえプレッシャーなんですけど……。
 でも、楽しみだな。
 今度こそ、本気の本気で、戦れそうだ。
 
「一瞬で、潰す」
 
 おお怖。
 
「では、初め!」
 
 ドォォォン!!!
 
 開始直後、俺が寸前まで立っていた場所に、ゲオルグの拳が突き刺さった。
 地面が陥没して、小さなクレーターができている。
 
「おおう! すげえな」
 
 俺はその3メートル程横手に移動して、舞い上がる土埃を眺めていた。
 
「! 貴様……!」
 
 躱されたことが腹立たしいのか、ゲオルグはますますその赤い瞳に憎悪を燃やす。
 
 ――……ワアアアア!
 
 遅れて、歓声が響いた。
 まさか本当に人間が竜人と戦れるとは、思ってなかったんだろう。
 
「ガァァァ!!」
 
 ゲオルグは雄叫びを上げて突っ込んでくる。
 確かに、ニナよりかなり速いし、強いな。
 
 ゲオルグの右ストレートを横にいなし、追って来る左フックを、身体を後ろに倒して避ける。
 
「避けてばかりでは、勝てぬぞ!」
 
 そりゃ、そうだな。
 楽しいからもうちょい続けたかったんだけど。
 軽くバックステップで距離をとった。
 
 ゲオルグがまた馬鹿正直に突っ込んでくる。
 
「ガアア!」
 
 竜人ってのは力が強い分、技を磨かないのかもな。
 真っ直ぐ頭に伸びてくる右手を、身体を捻るように躱しつつ、ゲオルグの懐に入る。
 同時に、その右腕を俺の両手で巻き込むように掴み、肩と背中でゲオルグを持ち上げるように浮かせる。
 
「そぉい!」
 
 ズドォォォォン!!
 
 いわゆる、一本背負い。
 面白いように決まったな。
 先程ゲオルグが作ったクレーターよりも、いくらか深い穴ができた。
 背中で削岩する羽目になったゲオルグは、完全に意識を失っていた。
 
 ――シーン。
 
 場内が静まり返る。
 あれ? 何この空気?
 
「あのー。俺何かまずいことした?」
 
 審判に尋ねる。
 
「あ、いや。…………しょ、勝者、リュースケ・ホウリューイン!!」
 
 ――ワアアアアアアアアアアアアア!!!!
 
「うおっ! びっくしたなーもう!」
 
 審判が俺の勝利を宣言すると、黙っていた観衆が突然大歓声を上げた。
 
「リュースケー! よくやった!!」
 
 俺は、跳びついてきたニナを、両手でがっしりと受け止めた。
 
「リュースケ! リュースケ! 信じておったぞー!」
 
 ニナは俺の肩に、頭をぐりぐりと押し付ける。
 よしよし、可愛いやつ。
 頭を撫でてやると、嬉しそうに身じろぎした。
 
 ヒューヒュー、と冷やかしの口笛が聞こえる。
 人も竜人もこういうところは変わらんなあ。
 
「ぐ、はっ!」
 
 大観衆の冷やかし中ニナの頭を撫でていると、目を覚ましたのかゲオルグが咳き込んだ。
 身体をうつ伏せにし、手をついて立ち上がろうとしている。
 
「お、おい、大丈夫か?」
 
 せっかく気を使って声を掛けてやったのに、ゲオルグは赤い瞳をギラギラさせて、俺を睨みつける。
 
「ぎ、貴様ぁ……よくも……恥を……!」
 
 あれ!? 勝っても負けても恨みっこなしって話じゃなかったっけ!?
 
「ゆ、許さんぞぉぉぉァァァァアア!!」
 
 叫びながら、ゲオルグの身体が一瞬にして巨大な黒い竜の姿に変貌した。
 見た目は、日本とか中国っぽい細長い「龍」ではなく、西洋風の脚で立つタイプの「竜」、ドラゴンだ。
 全長10メートルくらいか?
 尻尾を抜いた頭胴長(とうどうちょう)は、6メートルくらい。
 
「ギャァァァオオオウ!」
 
 黒竜の叫びが俺の鼓膜を震わせる。
 何か完全に我を失ってるっぽいなあ。
 
「あわわ……」
 
 俺の腕の中で、ニナが若干びびっている。
 
「あれ? こいつの服はどうなってんの? 巨大化したんならそのへんでビリビリに破けてるはずじゃね?」
 
 だが見当たらない。
 
「気にするところはそこじゃなかろうが!」
 
 ニナの突っ込みももっともではあるが、気になったんだから仕方ないだろう。
 
「ガァァァァ!!」
 
 黒竜ゲオルグが赤い瞳を爛々とさせ、鋭い牙の隙間から黒い靄みたいなモノを洩らしながら、こちらに突っ込んでくる。
 人型でも竜型でも、猪突猛進なヤツだな……。
 
「お、おい! リュースケ! どうするんじゃ!」
 
 さて、どうするかねえ。
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