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第7話 婚約の儀
昨日、俺がゲオルグを倒し、城内は大騒ぎになった。
おそらく、黒竜王への謝罪とか、いろいろあったんだろう。
バタバタしてるうちに夜になり、適当な客室をあてがわれたので、すぐに寝た。
そして今日は、本来ニナとゲオルグの婚約のために用意されたのであろう、面倒な行事を消化しているところだ。
謁見の間。
ひざまずく俺の首に、ニナが花の首飾りをかける。
「しきたりに従い、ニナ・ベラ・アドルフィーネ・エルメントラウト・リア・ミュリエル・ヴィオラ・ナターシャ・フィオーナ・フィロメーラ・ルイースヒェン・ヴェロニカ・フォン・ヴァイス・ドラッケンレイは、リュースケ・ホウリューインを婚約者と認める」
ニナの宣誓により、婚約の儀は終了と相成った。
儀式の参加者たちからは、惜しみないかは知らんが拍手が送られた。
一般の竜人の間ではこうした儀式は簡略化され、単に首飾りを贈るという行事になっているようだ。
王族のニナが婚約するということで、物々しい儀式が行われた。
「ささやかながら、広間に祝宴の用意をさせていただいております。心ゆくまでお楽しみください」
主賓のニナが対外向けの話し方で促すと、参加者たちは広間の方へ移動を始めた。
ふう。やれやれ。肩こった。
俺は肩をぐるぐると回す。
「お疲れ様でした」
王妃のエルザさんが声を掛けてきた。
「ええ。本当に」
忌憚ない感想を述べると、俺の義母になる予定の人は目を丸くした。
それから、クスクスと笑いを零す。
「面白い方ですね。あなたのような方が今の白竜城に来て下さったことを、嬉しく思います」
そう言って、エルザさんもパーティ会場へと消えて行った。
……何か含みのある言い方だなあ。
嫌な予感がする。
脇で大人しくしていたニナに声をかける。
「おい、ニナ」
「なんじゃ」
「『今の白竜城』ってのはどういう事だ?」
「ん? ……ああ。今は竜人と魔人が、まかり間違えば戦争の、一触即発な緊張状態じゃからな。リュースケに戦力としての期待を寄せておるのではないか?」
へぇー。
……おい。
「そんな話は聞いてないぞ!」
一生楽して生活できるんじゃなかったのか!
「きたるべき戦争に備えて、黒竜人との関係改善が図られたんじゃけど……。言ってなかったか?」
こいつ……!
「ニナ、この俺を、謀ったな」
「あだだだだ! 痛いのじゃ! その間接はそちらへは曲がらぬのじゃー!」
くっ。俺としたことが……!
とんだいざこざに巻き込まれそうだぜ。
今更「婚約者辞めます」とはとてもじゃないが言いだせない空気だ。
そう、とてもじゃない。
「婚約者を辞める」
俺は言う。
「まー!? 待つのじゃ! まだ戦争になると決まったわけじゃなかろう!」
ニナが俺に縋りついて、涙目で見上げてくる。
思えばこの可愛さに騙されたのだ。
……なのだが、突き放す気にもなれない。
「仕方ない。もう少し様子を見てやるが、戦争なんてしち面倒臭いことに関わる気はないぞ」
「……ゲオルグをぶっ飛ばして、黒竜人との関係悪化を招いたからには、無関係ではいられんと思うが……」
「ああん?」
「な、何でもないのじゃ」
まったく。
厄介な事になりそうだ。
とりあえず、逃げ出す前に宴には参加しておくけど。PR
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